こんにちは!ワーママのうどんです。
こちらの自己紹介記事でも出てきた、「書店ガール」(碧野圭、PHP文芸文庫、2012年3月発売)を紹介します。
妊娠、出産を経験してからというもの、手に取る本はいつの間にか子育て、出産、家族がテーマのものばかりで、出産前に比べるとかなり傾向が変わってきました。
というより、本なんて、産後ろくに読めていなかったのが正直なところです。
もともと、いろいろなジャンルをかじるタイプですが、それぞれのジャンルの中で、色んな立場の作家さんたちが、どのように妊娠、出産、子育てを描いているのか、
これからもどんどん読んでどんどん紹介していきたいです。
「書店ガール」も、本屋ではたらく女性の話、と思いきや、
もう、これぞまさに「子育て小説」やん!という内容!
初レビューは、書店ガールの1~3巻までを一挙にご紹介します!
でも、レビューと言いつつ、ただの感想ですからね!
あ、ちなみに、なるべくネタバレは避けたいですが、もしばれちゃってもご容赦ください。
「書店ガール」1巻は結婚編
冒頭、亜紀はイヤな女だった
亜紀の結婚式のシーンから始まるんですが、
亜紀がどれだけイヤな感じの女か、ということが理子目線で語られます。
理子的には、副店長らしくかなり客観的に、冷静に見ているつもりですが、
もう読んでる側は、「亜紀ってなんてワガママなんや!こんな理想の結婚なんて、めちゃくちゃになってまえ!」って気分になります。
副店長の理子にも、感情移入できなかった
かといって、理子さんに感情移入できるかというと、それも無理です。
理子は、都内吉祥寺の老舗大型書店の副店長を40歳で任されており、バリキャリ独身です。
業界内での定評もあります。
いや、理子さんとの共感、難しい!
すでに管理職についている方は、部下をまとめる悩みとか、自分の仕事へのこだわりとか、理解できるのかもしれません。
「なんか、このひとすっげー」となります。
いや、いい人なんですけどね。
そんな理子ですが、母を亡くし、父と同居しています。
そんな中、父親が倒れてしまうという事件が起きます。
ここで、理子は一気に「親の介護」が必要になるかもしれない、という「子育て」に匹敵する現代社会問題のテッパンに直面し、読者としてはぐっ!と親近感が湧きます。
「あんたも苦労してんだね」
敵があまりにもイヤな奴すぎて…!
実は理子は、店長就任が決まっていたのですが、このあたりで店の社員たちに不穏な動きが出てきます。
そして、店長就任と同時に理子以外の男性社員たちの態度がひどくなっていくのですが、
この男性社員たちのゲスっぷりが見事です。
ウソなんか平気でつきます。
そして、理子の店長就任の裏の理由が、社員以外のスタッフたちに明らかにされる場面で、
男性社員たちはゲスの極みを見せつけてくれます。
そこで、亜紀がかましてくれるわけです。
もう惚れてまうやろー!!ってくらい、カッコいいです。
理子と敵対関係にあった、とか関係なしに、正義をガンガン振りかざすのです。
覚悟決めてからは、もう応援団長の気分
亜紀の喝に目覚めて、理子も店長として、本社へ立ち向かう覚悟を決めます。
それまで、保守的で「いかにも上司」だった理子も、ここからは攻めまくります。
亜紀と理子と、本屋のスタッフたちにエールを送り続けたくなります。
ちなみに、結婚編と言っても、既婚者の方も経験あるかもしれませんが、あまり面白くないものです。
亜紀の結婚生活は期待していたような夢ではなく、旦那の人となりを少しずつ思い知る、とても現実的なものです。
「書店ガール」初巻の見どころは、やっぱり本屋が生き残りをかけて奮闘するところです。
亜紀が思いついたイベント企画がうまくいくのかどうか、最後までハラハラします。
そして、全巻通してですが、書店の裏側の業務、書店員の仕事作法、出版社や編集者、作家とのかかわり方など、とても丁寧に描かれていて、書店業界を深く知ることができます。
個人的に、「業界の裏側」がストーリーを通して読める本って、大好きです。
「書店ガール2 最強のふたり」は妊娠編
亜紀に伝えたいことが多すぎる
書店ガール2では、亜紀の妊娠が判明します。
新たな職場環境で、自分のやりたいことで成果を出して、今まさにノリに乗っているとき…
亜紀はもちろん仕事を続けたい、出産後も続けたいと言い、現場(書店)から離れることも拒みます。
でもさー、亜紀ちゃん、書店員は立ち仕事なんでしょ?重い荷物もいっぱい運ぶんでしょ?
妊娠してなくてもつかれる仕事だよ~
ちゃんと休もう?
イベントで倒れて妊娠が発覚した時点で、もう本来ならアウトというか、
かなり気を使わないといけない状態だよ~?
と、Twitterなら返信を入れていることでしょう。
しかし、みなさん安心してください。
亜紀ちゃんも、ちゃんと子育て中の先輩スタッフ(パート勤務)に相談して、手厳しいアドバイスを受けたりして、少しずつ考え方を変えていきます。
亜紀の旦那にも言いたいことが山ほどある
でも、亜紀以上に文句を言いたいのが、亜紀の旦那、伸光です。
妊娠がわかったから、仕事辞めろってなんなの?
産後は仕事やめろって?
自分は忙しくて、残業も飲み会も出席しないと評価されないからって?
もう、共働き子育て世帯のワーママから石投げられますよ。
でも、みなさん安心してください。
伸光はその後、チョンボをやらかし(実際に伸光がやらかしたわけではなく、社内抗争に負けた形)、編集長の座を追われ、窓際族となるのです。
そこで、仕事について、自分のやりたいことはなんなのか、伸光はゆっくり考えます。
亜紀と子どものことについても、ちゃんと考えて向き合います。
こうやってちゃんと考える時間って、本当はめちゃくちゃ大事ですよね。
子育てに入る前でよかったー!安心したー!!
大人の恋、羨ましすぎる!
一方で、新しい書店で店長となった理子は、自分をサポートしてくれる副店長と少しずつ親しくなります。
副店長、既婚者子アリ単身赴任です。
…。
まさか、こんなにドキドキするとは…!
なんにもないんですよ!?キャッ♡みたいなシーン。
こんなプラトニックな恋、ワーママにはない…
いや、してる人もいるとは思うけど。
切ない、けど、大人の独身女性が超絶うらやましい!と感じた瞬間でした。
まあ、自分が独身40歳で、恋できるか、って言ったらまた違うんでしょうけどね。うん…
一番盛り上がるイベントはドキドキ感より安心感
新しい書店でもイベントやりますよ~!
しかも、書店が入っているショッピングモールを巻き込んで、地域の書店も巻き込んで、やっちゃいます。
大がかりなんですけど、もう理子と亜紀がいるので、大丈夫かな、という安心感で読み進められます。
あんまりドキドキしません(笑)
「書店ガール2 最強のふたり」は、最後のイベント開催にもつながる古本市のようなブックフェアが全国で盛り上がりを見せている様子が細かく描写されています。
正直、古本市とか一部の地域で開催されていることしか知らなかったので、こういう詳細な情報はありがたいです。
「書店ガール3 託された一冊」子育て編
ついに亜紀がワーママに!
亜紀が育休から明けて、職場復帰しています!
おかえりなさ~い!
あたたかく見守りたいですよね。
相変わらず、書店の現場で働いてる…大丈夫なの?
しかも産後半年で復帰って、私と一緒!
全然体戻ってないんじゃない?
あーもう、やっぱり心配!
しかも、経済書担当なんて難儀なところになって、ストレス抱えてるんじゃない?
ちゃんと育児はサポートしてもらってるの?
実家近いのうらやましいなあ
と思いきや、亜紀ちゃんは実家が近いので、何かあればすぐにおばあちゃんに頼れます。
仕事が遅番で、旦那の伸光も遅いときや、
子どもが急に熱を出したときのお迎え、病院もおばあちゃんが行ってくれます。
うう、うらやましい…
でも、どうやらおばあちゃんに頼りっぱなしというわけにもいかないようです。
まさに共働きあるあるで泣きそう
亜紀の子どもがまさかの麻疹にかかった疑惑が出てきます。
それなのに、頼りのおばあちゃんは次の日から旅行…
旅行を止めるわけにもいかず、亜紀は仕事を休むことに。
仕事を休む連絡を入れて、嫌味を言われる辛さと言ったら…!
自分の体調不良の100倍くらいつらいですよね…
そもそも子どもが熱出して苦しそうにしてる時点で、もう心臓波打ってるんです。
ドキドキして眠れないんです。
寝不足で、つらそうだったり不機嫌だったりする子を心配しながら、
病院いかなきゃ、とかご飯どうしよ、とか悩んでるんです。
お願いだから、嫌味言わないでー!
あとで、ちゃんと副店長が嫌味言ってた理由も判明するんだけど、それでもやっぱり言わないでー!!優しくしてー!!
もうね、読んでて亜紀んちに駆け付けたくなりました。
し・か・も、旦那の伸光、まさかの「俺、麻疹やってないから別部屋で寝るわ(改変)」発言!
伸光、ちゃんと子育て協力してくれてるし、夫婦共倒れが一番ダメっていうのもわかるんですよ、わかるんですけどね。
なんか、さみしくなっちゃいますよね…
仕事は次世代へバトンタッチ
そんな中、亜紀にあこがれて本屋でバイトを始めた後輩、愛菜が、イケイケドンドン仕事をします。
かつての自分のように。
キラキラしてるんです。
あー、まぶしい。
私だって、できるならやりたいよ。
本読む時間だってほしい。
文芸担当だったら、自分がイベントしかけていきたいよ。
もうこの辺りは、ワーママやワーパパ皆さん共感できるんじゃないでしょうか。
子どもがいなくて、時間のすべてが自分のもので、何でもできるって思っていたころ。
もちろん、今も輝きたいけど、子育てで疲れ切っている自分にはその気力が湧いてこない…
「現場」は自分じゃなくてもいい、ちゃんと回っている。
むしろ、「現場」にいることで、迷惑かけているかも…
まあ、それでも、亜紀ちゃんの場合、ちゃんとしたマミートラックが用意されているんで、マシな方ですよ。
子育て期間は、自分の人生の優先順位をいやでも見直さないといけない、そんな時期ですよね。
実は東日本大震災について真面目に描かれている
個人的に、「子育て小説」として語ってしまっている「書店ガール3 託された一冊」ですが、
一番の題材は、東日本大震災です。
それも、当時東京にいた理子の視点で、東京で起こった震災について、
そしてエリアマネージャーとなった理子が傘下の仙台にある書店のリニューアルを通して、仙台で起こったことを知る形で描かれています。
正直、私は東日本大震災のあとに関連書籍を真面目に読んだことはありませんでした。
はっきり言って、避けて通ってきたのだと思います。
こんな臆病な人間はたくさんいると思うのですが、
理子は、被災地から少し離れた立場で被災地を見つめてくれるので、
あの時に何もできなかった人間の罪悪感とか、申し訳なさとか、そういった感情も一緒くたにして、それでも忘れかけた今だからこそ被災地について知ることの意義が伝わってきます。
当時、私は関西にいて何もできずに、旦那は被災地のために自分ができることをするといって、何度も東北に出かけていたころ、自分の弱さにフタをしていたんだと思います。
関東に越して来たって、状況は変わらず、いまだに東北には行けていません。
その後、各地で起こった災害の被災地についても同じです。
共働き子育て中のワーママなんて、いかに非力か…!
そんなくやしさと申し訳なさが少し浄化されるお話です。
災害と、働きながら子育てすることについて
震災後に出産した亜紀にとって、子育てにも震災の影響は出ています。
亜紀が現場で働きたい一番の理由は、「保育園から近い」です。
地震が起こったとき、都内から千葉県北東部まで歩いて帰ったという、元バリキャリで今は専業主婦のいとこのお姉ちゃんの話を聞いたからです。
当時、関東圏で子育てをしていた方々は、本当にいろいろ心配だったと思います。
有象無象の情報が飛び交う中で、働きながら子育てしていたママパパはあらゆることを検討して、中には地方へ引っ越したり、一時避難された方もいたと思います。
東日本大震災以前と、大災害が身近になってきて、防災の意識が着実に高まってきた今とでは、確実に子育て中のママパパの意識にも変化があったと思います。
その変化が、小説の細部にそっと、でもきっちりと盛り込まれています。
やっぱりイベントは安定感あり!
第3巻でも、最後はイベントが盛り上がりを見せます。
震災関連イベントということで、盛り上がりについて少し心配しますが、
でも理子と亜紀がいるから大丈夫!という妙な自信が読者にはあります。
イベントは着実に盛り上がって幕を閉じます。
まとめ
「書店ガール」1~3巻までをまとめて紹介しました。
紹介というか、登場人物に怒ったり、共感したりしているだけですね。
共働きワーママ・ワーパパも、亜紀の結婚、妊娠、出産、子育てを通して、働き方や子育てについて、改めて考える機会になると思います。
興味のある方は、ぜひ手に取って読んでみてください。