こんにちは、うどんです。え?また垣谷美雨さんですよ。
そして、今回はまさに「子育て小説」として、どんぴしゃなタイトル、「子育てはもう卒業します」!
3人の大学時代の同級生女性たちのそれぞれの子育てが描かれています。
かなり厳選されているものの、なんせ3家族分、大学時代から子育て終了までの期間が描かれているわけなので、登場人物は多めです。
ちなみに、このブログでメインとしている「ワーママ」は出てきません。
子どもが手を離れてから、それぞれに仕事は持つものの、子育て期間中はいわゆる専業主婦です。
それも当然で、主人公たちの年齢を考えると専業主婦が圧倒的にメジャーだった時代。
なので、今のワーママの母親らへんに近い生き方です。
ワーママではないけれど、子育ての気苦労はもう果てしなく共感できるし、生活やお金の苦労も、生々しくて、もうたまりません!
今回もほどほどにネタバレしていますよ!ご注意ください。
子育てと自分の人生の距離感って変化するらしい
子どもを生む前、人生は自分のもの!だった?
この小説では、3人の女性が主人公として描かれています。
かつて同じ都内の私立大学に通っていた、地方出身の3人、淳子、明美、紫、です。
それぞれの話は、本書で読んでいただくとして割愛しますが、学生生活は3人ともけっこうエンジョイします。
紫あたりは、格式高い実家で生まれ育っていますが、いずれにせよ親元離れた学生時代、3人とも十分な仕送りももらって、勉強はそこそこにしっかり遊んでます。
この後のことを考えると、ほんとつかの間の学生時代、しっかり友だち同士で楽しんでおくのって大事!
当時の女性の就職状況は涙なしには読めません
そんな3人もいざ就職活動!となった時に、驚くべき現実に直面します。
「自宅通勤にかぎる」
正直、私も本書を読むまで、日本の就職活動でこんなにわかりやすく女子を差別しているなんて知りませんでした。
今でこそ、「ワーママ」も登場するくらい女性の社会進出も進んできたけれど、ほんの数年前までは、妊娠したらそこで仕事をやめるのが常識。
さらに、その前は、結婚したらやめるのが常識。
そんな時代、大学を出て女性が働こうとしてもまともな働き口がない。
そして、結局大学を出ても出てなくても関係ないような仕事について、そこですら男性職員と差別されて、追い詰められた末の寿退社…
そりゃ、男女雇用機会均等法も作られますよね(あ、正確な年代とかはつっこまないでください)。
自分の母親は、ワーママで当時のマイノリティだったせいか相当ぶっ飛んでると思ってたけど、かと言って、田舎の専業主婦だった義母とは当然価値観が合わない。
それくらい、女性の働き方、生き方の価値観って、この数十年で激変してるんですよね。
同じ価値観なわけがない。
それをわかっていても、それでもわかり合えないくらい、「違う」。
だからこそ、こんな風に当時の状況がリアルに感じられると、やっと共感できるんです。
そういう意味で、親世代の価値観を知るというか、親世代の目線になれる、貴重な小説です。
3人が就活でいきどおる様子は、絶対みんな共感できるはず。
そしたら、親世代で就職した人、就職しなかった人、それぞれの理由にも、なんか納得できる気がするんだよね。
「子育て中」は人生の中心はまさに子育て…
そんな3人も、それぞれ一応就職して、結婚して妊娠して退職して、25-26歳で出産します。
こうやって書くと、やっぱり今に比べたら圧倒的に若い!
大卒で就職した女の子が、26歳で出産て、早すぎでしょ!って言いたくなるけど、実際は妊娠適齢期バッチリなんですよね…。
そして、子育てが始まりますが、みんな専業主婦なので、もちろん旦那の稼ぎに頼っています。
そして、やはり若い頃なので、旦那の稼ぎ自体もそれほどないとなると、それぞれに苦労します。
家が狭いとか、子どもの教育費とか、何より子どもの進学だとか、そのために、義実家と折り合いをつけて生活したり、子どもを赤ちゃんモデルにさせてみたり…
今まさに「子育て世帯」の方は、共感したり、「その手があったか」となるのかもしれません。
とにかく、この時代は「子育て」を中心に人生は動きます。もう本当に振り回されてるなっていうのが、客観的にみるとよーくよーくわかります。
「引っ越すなら、龍男が小学校に上る前に」なんて、
うちとまったく同じじゃないですか〜(てへっ
子育てが終わる時…って、けっこう遅いんですね(汗)
でも、なかなか終わらないんですよ。
みんな子どもが小学校〜高校と上がっていくにつれて、徐々に生活も楽になっていったり、生活レベルもあがっていったり、比較的「勝ち組」な人生を進めています。
でも、子どもが大学生になって、就職が決まるまでは全然子育てが終わってる感じがしません。
ある程度手が離れて、時間に余裕が出てきたときに、「私もなにかやらなきゃ」と焦るあたり、すごくリアルだし、3人とも似たような心境にさせているあたり、
本当に作者の柿谷さんて、真面目なんだなあとも思います。
が、とにかく紫なんて、子どもは大学に行かずにモデルとして女優としてしっかり稼いでいるのに、それでもなかなか安心できないのです。
子どもが就職しても、仕事を辞めたとなったら、結局は心配してしまう。
そして、3人集まって、「もう子育ては卒業する!」と宣言しないと、卒業できないのです。(卒業できるのかも怪しい…)
幼児を抱えて、「早く子育て終わってほしい〜」と思っている身としては、けっこうズシーンと重い現実突きつけられますよ…
とはいえ、なんだかんだこの頃には、それぞれに仕事をもって、趣味もあって、けっこう充実しています。
その充足感を得るまでの道のりが、けっこう長くて辛そう…ということはしっかり伝わりました…
まとめ
今回も、柿谷さんの著書でしっかり勉強させてもらいました。
家!
柿谷さんの本で一番学ぶのって、これに尽きる気がするんですが、ほんと何より家をどうするか、この問題は大きい気がします。
特に、子育て世帯にとって、家をどうするかは、子どもの教育をどうするかという問題と切っても切れません。
本書でも、明美のケースは想定の範囲内ですが、紫、淳子のケースはなかなか真似できないかもしれません。
世間であまりないケースだからこそ、小説で学ぶ価値ありです!
ぜひお試しください。
最後まで読んでいだき、ありがとうございました!